お金持ちと庶民との違いって何?定義上は、働かなくても勝手にお金を稼いでくれるモノ(土地とか、株とか、会社とか)を持っている人を資産家と呼ぶ。でも、お金持ちと資産家は、また違う。年収が3千万を越えるサラリーマンでも資産家では無いのだ。お金持ちをじゃあ、年収が三千万を越える人にしておこう。 日本は階級社会化するっていう論調に良くある話山本夜羽の日記より
それは良くわかる彼の論調は、良くわかる。愚民化政策と社会の監視による階級の固定化って話。 同じような本に不平等社会日本(さよなら総中流)佐藤俊樹 / 中央公論社 / 00/06/25と言う本がある。ホワイトカラーで上層階級の人の息子も、ホワイトカラー上層階級で、社会階層が固定化しつつあるって話。 私の様な最下層(美術家なんて本質的には単なる道化なので、最下層でない訳がない)は、やはり階級が固定化した社会は、生き辛いと思う。生まれの階層が、死ぬまで続くのは、何となく良くない様に感じる。ってのは、一般的な感情として良くわかる。そして、そのことはマスコミが煽る論調にもなる。曰く、階級が固定化するのは良くないと。 ところで上層部(上流階級)はどう考えてるの?良くわからないのは、上流階級はどうして、貧富の差を拡大しようと思うのか?一つには、自分の子供にとって有利だという感情。これは理解できる。誰だって自分の子供は可愛い。出来れば楽させたいって思う。自分自身も豊かな暮らしが続けられるなら、こんなに嬉しいことはないって考えるのも納得できる。 けれども、よく考えて見よう。日本にいて上流階級でいることは、とてつもなく大変で、生き辛い。真綿で包んだ拷問の様なものだ。 結論を先に言うなら、リベラルアーツもノブリスオブリュージュも死に絶えたこの国で、上流階級でいることは、地獄だと思う。子供の頃、お金持ちになったらって考えたことは無いだろうか?お金持ちになったら何したい?大きな家、食べきれない食べ物、高級車、文化的な生活。或いは、ハーレム?子供だったらプール一杯のプリンとか、たわいもないことを考えるだろう。(このうち、食べきれないほどの食べ物ってのはもはや庶民でも手に入れている。)
では、それらのモノが既にある上流階級の子供たちは、何を欲しがるだろう?
まだ、子供の内は良い。けれども、20代になったら?クラブ借り切ってバカ騒ぎ?羽柴秀吉みたいに、青森にホワイトハウス建てちゃう?別に何処ぞの土地成金みたいに、天守閣建てても良いけど。 教養なんて既にトリビアの泉化しているそして、昔、上流階級にだけ特権的にアクセスすることを許されていた回路は、既に大衆のモノとなっている。美術館にも、コンサートホールにも、料亭にすら、大衆がうじゃうじゃいる。本当の意味で上流階級にしかアクセスできない情報や、場所などは、ほとんど無いのでは無いだろうか?(海外のプライベートビーチならちょこっとあるかも知れないけれど)。上流階級であるためには、自分たちしかアクセスできない情報や場所を、持つのが一番だし、それが大衆との差別化の役割を果たす。たとえば、ソ連時代の共産党幹部だけが、ポルノフィルムを見られた様に。けれども、全てが大衆仕様に、様変わりしてしまったこの日本で、特権階級のみがアクセスできるものは本当にあるのだろうか?桂離宮?親子連れがビニールシート敷いて、弁当食ってるぞ。 貴族でおじゃる同様に、ノブレスオブリュージュも無い。無いというか、感覚として解らないだろう。Noblesse Obligeとは、高貴なるものは、常人より重い責任を負うってことだ。 尊敬されたい人々上に書いた様に、いくらものに囲まれても、その環境が当たり前の2世以降にしてみれば、もはや、モノがたくさんある状況に飽きている。じゃあ、2世以降の金持ちが欲しがるものは何か?それは、大衆からの尊敬の念だ。 心理学者のマズローが、安全や食の欲望が満たされると、自己実現の欲望が芽生えると述べたが、それと同様に人から尊敬されたいという欲望も芽生える。 人から尊敬を払ってもらうためには、結局自分がひとかどの人間にならなければならない。けれども悲しいかな日本には、リベラルアーツもノブリスオブリュージュもない。上流階級は、大衆から尊敬を払ってもらえないので、出来ることと言えば二つ、お金をばらまくか、サロンに閉じこもって傷をなめあうかの二つしか選択肢が無いわけだ。 しかし、二つとも寒々しいのは目に見えている。九官鳥が、いくら「偉い」とか「凄い」とか繰り返し喋っても、いい気がしない様に、お金をばらまいて、ほめられても、何となく嬉しくはない(成金はバカだからだまされるけど、2世にはもうきついだろう。たまに気づかない人もいるけど)。同様に、サロン内で互いに褒めあう、生産性の無さにも気が滅入るだろう。 そうなると、新興の成金をうまく言いくるめて、サロンに入れたうえ、その田舎モノぶり加減(自分たちより金回り良いのに)を笑うという屈折した暇つぶししか出来なくなる。しかも階級を固定化してしまうとそういう新しい血もなかなか入ってこない。 閉塞する上流一部で、危惧されている金持ちのコロニー(城壁で囲まれた都市)などその傾向に、ますます拍車がかかる。城壁の中では、奇妙な閉塞感が漂い、外では最悪の治安の中、ホームレスが楽しげに、酒盛りしている。上流階級の人間は、やがて自壊を始める。
それは、新興の郊外住宅が、気持ちの悪い同調圧力に支配されるのと同じ、空気に支配される。 |